基礎知識

2025年6月4日に更新された2書類の検証報告

5月19日公式サイトに各種資料が掲載されてから約半月が経過し、そのうちの2ファイル「事業計画テンプレート」と「新市場・高付加価値事業の考え方」が6月4日にアップデートされました。
審査に影響しかねない修正かもしれないので、更新履歴を具体的に示してほしいものです。

数ヶ所の修正と思っていたので、短いコラムで収めるつもりでしたが、読み進めてみると、その修正箇所の多さと、電子申請システムへの信頼性が少し揺らいだ印象を受けました。
事業計画書の作成に着手されている方は、念のため確認された方がよいと思います。

なお、2ファイルを何度も見直してみましたが、本コラムご紹介以外に差異があった場合はご容赦ください。 ※軽微な文字校正には触れていません。

事業計画書テンプレート

【旧P1⇒新P1】文頭「注意事項」の追加

以下の①~③が追記されました。

事業計画記入時の注意事項

①事業計画テンプレートの各項目は、申請する際には、電子申請システムにて入力してください。画像(写真・図面)も、「3-11.添付書類一覧(事業計画関連)」を参考に、電子申請システムにて添付してください。

②1回の公募につき複数の事業を計画している場合、1つの事業計画内に複数計画を記載する必要があります。各事業計画を識別できるよう、各項目欄にて箇条書きで番号を付けて記載ください。(例:①、②、③)
なお、複数計画の場合も入力文字数は変わりません。

③電子申請システム入力時、「空白」(スペース)や「改行」も1文字としてカウントされます。

①事業計画書は通常、文章の他に「写真、図解、グラフ」などの参考資料を添えて作成するのが一般的ですから、今回の「テキスト」と「写真、図解、グラフ」を分離して申請するスタイルには戸惑う人も多く、申請が煩雑でミスが多発することでしょう。

これに伴って「3-11.添付書類一覧(事業計画関連)」の内容も変更となっていますが、こちらは後ほど改めて触れたいと思います。

②1公募回で複数事業を申請できることは、先代補助金「事業再構築補助金」と変わりはないはずですが、「なお、複数計画の場合も入力文字数は変わりません。」とありますので、入力項目によっては、文字数制限内では全く説明が足りなくなりそうなシーンも出てきそうですので注意が必要です。

他項目を見ると「複製して記載」と必要な個所には都度記載があるので恐らく、システム側も複数入力できるように設計されている可能性を鑑みると、事務局が「新規事業を複数申請できることを知らずにシステム設計していた。」のではないか?という可能性もあります。

③士業や公務員の文章の書き方として「項番の後は、1字分空白(ブランク)を開ける」という慣習がありますが、電子申請システムへの入力方式では無用の長物ということなのでしょう。併せて項番は「項目が下がるごとに1字下げにする。」といったルールもありますが、「改行も1文字としてカウント」と敢えて示されているぐらいなので、無駄な慣習は排除してという意味かと思います。

【旧P4⇒新P5】「3-3. 現状分析」の修正

<変更箇所>

「②現在の状況」⇒「②米国の関税措置による影響の具体的内容」

以下の文章が消された真意は測りかねますが、既存事業で関税措置による影響があることだけを説明できれば良いと思われます。

「今後の見通し」なんて元凶であるトランプ本人でもわかっていないと思いますので、もはや誰にも説明不可能です。

「既存事業の状況と今後の見通しについて、経済社会の状況等を踏まえて記載してください。」

なお、「※電子申請システムでは、「現在の状況」という項目名となっています」という注意書きがありますので、申請時には入力箇所に戸惑わないようにしましょう。

【旧P5⇒新P6】「3-4. 【新市場性と高付加価値性は選択制】新規事業の新市場性・高付加価値性」の修正

<変更箇所>

「3-4. 【新市場性と高付加価値性は選択制】新規事業の新市場性・高付加価値性」に以下の文章が追加されました。

「新市場性または高付加価値性のどちらかを選択し、チェックしてください。」

図解フローを見ると、「新市場性」>「高付加価値性」のようにも見受けられ、この優先順位が採択に影響するのでは?などという懸念が当初から持ち上がっていました。

実際の書面申請の審査基準はわかりませんが、今回この文言が追加されたことで、「新市場性」「高付加価値性」は「並列で評価される」と読み取ることができそうです。

【旧P9⇒新P10~11】「③スケジュール」の修正

<変更箇所>

第1回公募回の申請スケジュールに沿った形で「月日」や入力例が「(●●)」という形で追加されました。

以下の注意書きにもあるように、申請時にはこれらの入力例は削除しなければなりませんので注意が必要です。

「※()内は記載例です。スケジュール作成時には削除してご使用ください」

【旧P11⇒新P13】「⑧資金調達表」の修正

「電子申請システムでの自動計算等で入力不要な項目」が改めて示されたという内容です。
また、入力文字数が具体的に明記されました。

【旧P13⇒新P15】「3-9-2. 経費明細」の修正

前項同様「電子申請システムでの自動計算等で入力不要な項目」が示されました。
こちらも、入力文字数が具体的に明記されました。

「【A】事業に要する経費(税込み額)が「(半角数字8桁以内)」ということは、一億円台は「申請できない。」「する必要がない。」ということになります。

先代補助金「事業再構築補助金」では、新事業に必要な経費として自己負担分(補助対象外)も含めて申請していましたが、この文字数制限でも問題は生じないか?少し気になります。

【旧P13~14⇒新P16】「3-10. 収益計画」の修正

「3-10. 収益計画」の3項目(付加価値額の目標値、一人当たり給与支給総額の目標値、給与支給総額の目標値)の入力文字桁数と、入力すべき「目標値」とは「パーセント」であることが明記されました。

【旧P14~15⇒新P17】「①収益計画」および「②賃金計画」の修正

「電子申請システムでの自動計算等で入力不要な項目」が示されました。
表内のグレイアウト箇所は、自動計算により入力不要ということです。
こちらも、入力文字数が具体的に明記されました。

また、以下の注意書きが追加されました。

※直近の事業年度とは、応募時点で直近の事業年度とします
※基準年度とは、実績報告書の決算年度(報告対象年度)の直前の事業年度とします
※報告年度とは、採択日~補助事業完了期限日のいずれかの時点が含まれる事業年度とします。基準年度と同一の年度となる場合、基準年度と同じ内容を入力してください

【旧P16⇒新P19】「3-11. 添付資料一覧(事業計画関連)」の修正

以下の注意書きが追加されました。

・電子申請システム上でアップロード可能なファイル数は、1項目につき1ファイルです。
・2ファイル以上のアップロードが必要な場合は、電子申請システムの「31. 任意書類>書類予備」欄をご使用ください。
・一覧に該当しない資料を提出する場合も、電子申請システムの「31. 任意書類>書類予備」欄をご使用ください。
・PDFファイルを含むすべてのファイルにおいてページ数の制限はありません。1ファイル当たり10MBまでアップロード可能です。

最後に、ひっそり以下の注意書きが追記されています。
 

「※本テンプレートを用いた事業計画書の提出は任意ですが、作成済みの場合はなるべくご提出ください」

電子申請システムで完結できると踏んでいたけど、やっぱり無理があったようです。

膨大で煩雑な入力作業が強いられる電子申請システムで、「裏付けとなる客観的なデータ/統計等の図表等」などのアップロードミスが頻繁に起き得ることは容易に予想できます。

応募申請は、一度提出してしまえば事務局とのやり取りが基本的にない、やり直しのきかない審査であることを考えると、このような危険をはらんだ電子申請システムである以上、事業計画書は、ボリュームのある資料等は別添としても、裏付けとなる客観的なデータや統計等の図表等は、通常の事業計画書を作成するように、初めから当該項目近くに添付して作成するのが無難です。
任意でなく「必ず」事業計画書(PDF)を併せて申請することをお勧めいたします。

うっかり添付忘れた図表ファイルがあった場合でも、書面審査でオリジナルの事業計画書を参照するはずです。

応募審査では、正確な不採択理由は公表されませんので、このようなことで採択から漏れてしまっては、とてももったいないです。

新市場・高付加価値事業とは

更新された箇所を漏れがないように何度か見直しましたが、表紙の「新市場・高付加価値事業とは」というお題目が、「新市場・高付加価値事業の考え方」に変わり、「-新市場・高付加価値事業とは-」が添えられたことだけかもしれません。

本コラムのまとめ

今回の更新は、事務局に問い合わせがあった不明瞭な。

先代補助金制度「事業再構築補助金」とは異なり、「新事業進出補助金」で新たに採用された「事業計画書の電子申請システムへの入力方式」に対する質問に応えたものと考えられます。